開くのに3分、保存で1分——
そのExcel、重くなったのではなく
詰め込みすぎです
ダブルクリックしてから、砂時計がくるくる回りつづける。ようやく開いたと思ったら、1行入力して保存するだけで画面が真っ白——。長く使ってきたExcelの台帳ほど、こうなりがちです。新人のあいがぶつかった“ファイル肥大化”の落とし穴を4コママンガでたどります。
あいが引き継いだのは、創業以来ずっと使われてきた受注管理表でした。ここからが、その一部始終です。
開くのに3分、保存のたびに1分。「あー、それね。朝いちで開いたら、夕方まで閉じちゃダメよ」——ベテランの黒須さんはもう慣れっこ。けれど固まった画面を鉄尾くんが強制終了して、あいの入力は消えました。
なぜ、Excelはここまで重くなるのか
「パソコンが古いからでは」と思われがちですが、原因の多くはファイルの側にあります。だいたい、次の3つが重なっています。
1. Excelは“全部”をいっぺんに読み込む
これがいちばん大きな理由です。Excelは開いた瞬間に、そのファイルの中身を最初から最後までまるごとメモリに載せます。今日の1件を入力したいだけでも、7年分の受注データが例外なく読み込まれる。だから、データが増えれば増えるほど、比例して重くなっていきます。
これは不具合ではなく、そういう道具だということです。1枚の紙をぱっと広げて全体を見渡せるのがExcelの良さで、その良さの裏返しが「広げるのに時間がかかる」なのです。
2. 数式が、空っぽの行にまで効いている
「あとで行を足すかもしれないから」と、数式を下まで広くコピーしてある台帳はよくあります。=VLOOKUP(...) が1万行 × 10列に入っていれば、それだけで10万回の計算です。何か1つセルを直すたびに、この10万回がやり直されます。保存のたびに固まるのは、たいていこれが犯人です。
さらに =INDIRECT() や =OFFSET()、=TODAY() といった関数は、関係のないセルを触っただけでも計算し直される性質があります。1つ2つなら気になりませんが、何万個ともなれば話は別です。
3. 目に見えないゴミが溜まっている
そして、開いても何も見えないのに容量だけを食っているものたち。
行ごと・列ごとにかけた書式が、使っていない範囲まで設定されているコピペを重ねた結果、条件付き書式のルールが数百・数千に増殖している貼り付けたスクリーンショットやロゴ画像が、圧縮されないまま残っているもう存在しない別ファイルへのリンクや、古いピボットの控えが残っている
見分け方はかんたんです。Ctrl + End を押してみてください。データの終わりよりずっと下、たとえば10万行目あたりにカーソルが飛ぶなら、そこまでが「使用中の範囲」としてファイルに記録されています。空っぽの10万行を、毎朝いっしょに読み込んでいるわけです。
「軽くする」では、終わらない
もちろん、対処法はあります。不要な書式を消す、数式を値に変える、画像を圧縮する。実際、それでいったんは軽くなります。
けれど半年も経てば、データはまた増えます。業務が続くかぎり、行は増えつづけるのですから当然です。そこで次に思いつくのが「過去のぶんを別ファイルに切り出す」という方法——そして、こうなります。
受注管理表_2024年まで.xlsx受注管理表_2025年.xlsx受注管理表_現行.xlsx
第2話でお伝えしたのと、まったく同じ景色です。軽さと引き換えに、「去年の同じ取引先、いくらで出したっけ?」が一発で調べられなくなる。3つのファイルを順番に開いて(また3分×3回)、目で探す。切り出しは解決ではなく、問題の置き場所を変えただけなのです。
待ち時間は、地味に高くつきます。開くのに3分、保存で1分——それが1日5回、5人なら1日75分。月20日で25時間、およそ3人日ぶんが「待っている時間」に消えている計算です。
その帰り道、あいは叔父の居酒屋に寄りました。「大事なことが全部書いてあるのに、開けないんだよ」カウンターの向こうで、大将の小津さんはこう返します——「全部カウンターに並べる店が、どこにある」。
全部をカウンターに並べる店はない
小津さんの店にも、在庫は山ほどあります。けれど、カウンターに出ているのは今日のお通しと突き出しだけ。残りは全部、奥の冷蔵庫と棚にしまってある。注文が入ったぶんだけ、奥から出す。それだけのことです。もし全部並べたら、客の座る場所がなくなって、店として成り立ちません。
あいが気づいたのは、まさに同じ構図でした。大事なものを捨てる必要はない。しまい方を変えればいい。7年分の受注を毎朝カウンターに全部並べていたから、座る場所がなくなっていただけなのです。
ここでも、Excelが悪いわけではありません。表を作り、その場で計算し、印刷する。この用途でExcelに勝てる道具は、そうそうありません。ただ、何年も積み上がりつづける台帳の置き場所としては、そもそも設計が違うのです。
「全部を1枚に載せておかなくても、よかったんだ」必要なぶんだけ取り出せばいい——。そう気づいたあいが相談したのが、RECOGでした。後日、報告に来たあいに、小津さんはグラスを傾けて一言。「注文が入ってから出すほうが、うまいだろ」
開くのは一瞬、探すのも一瞬に
では「詰め込まないやり方」とは何か。RECOGがやっているのは、受注管理表のように積み上がりつづける台帳を専用Webアプリに移すことです。データはデータベースに預け、画面には必要な行だけを呼び出します。
- 何年ぶん貯まっても、開くのは一瞬。読み込むのは表示するぶんだけだから
- 過去データを切り出さなくていい。10年前の取引も、検索すればすぐ出てくる
- 「保存」を押して待つ時間がない。入力したそばから保存されている
- そして——操作感はいつものExcelのまま。新しい使い方を覚え直す必要はありません
会計ソフトや基幹システムを入れ替える、という大げさな話ではありません。今いちばん重くなっている“開くのに3分かかる1枚”を、開くのを待たなくていい形に置き換えるだけ——。それだけです。
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無料オンライン相談を予約する余談:小津さんの店の奥からは、ときどき頼んでもいない一本が出てきます。「これは姉貴——専務のおごりだ」と言って。 / 登場人物のことは こちら でも紹介しています。